若手リハビリスタッフを育てるには?経験の積ませ方と現場の工夫

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もんきち
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みなさん、こんにちは!もんきちです。

今回は、経験の積ませ方について考えたいと思います。

スタッフ
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患者さんをすればいいんじゃないの?

もんきち
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どうすれば、良い経験の積み方ができるのか整理しておきましょう!

こんな方にオススメ!

  • マネジメント初心者の方!
  • 医療管理職の方

はじめに

「若手スタッフにどう経験を積ませればいいのか――」
リハビリ現場で教育に関わる方なら、誰もが直面する課題です。
経験不足による不安、判断力の弱さ、離職…。その背景には、単なる「症例数」では補えない構造的な課題があります。
この記事では、学術的な知見と実践的な工夫を交えながら、若手スタッフが自信と力を身につけていくための方法をお伝えします。

なぜ「経験の差」が成長を左右するのか?

リハビリ専門職において、「経験」は単なる場数ではありません。
むしろ、経験とは臨床での状況にどう向き合い、どう振り返り、次に活かすかという一連のプロセスの中で形成されるものです。

このプロセスは、コルブの「経験学習理論(Experiential Learning Theory)」に基づくと、以下の4ステップで進みます。

① 具体的経験 → ② 内省的観察 → ③ 抽象的概念化 → ④ 能動的実践

新人が「経験不足」とされるのは、①だけに偏り、②③④が回せていないケースが多いのです。

また、臨床推論能力は経験を通じて段階的に成長します(Bennerの5段階モデル:Novice→Expert)。
これにより、若手は「知識があっても現場で判断できない」状態に悩みやすくなります。

Bennerの5段階モデル(Patricia Benner, 1984)

段階特徴
1. 初学者(Novice)指示がないと動けず、教科書的知識に依存。状況判断は苦手。
2. 初級者(Advanced Beginner)一部経験を積み、状況を少し理解できるが、全体像は把握できない。ルール重視。
3. 有能者(Competent)数年の経験を持ち、計画的・効率的に行動できる。優先順位の判断が可能。
4. 熟練者(Proficient)状況全体を直感的に把握し、柔軟に対応できる。パターン認識が進む。
5. 専門家(Expert)高度な直感と経験に基づき、瞬時に適切な判断ができる。理論より実践重視。

若手スタッフに経験を積ませるための現場での工夫

単に「たくさん患者を担当させる」だけでは、良質な経験にはなりません。
むしろ**「意味づけされた経験」=“振り返り”と“支援の質”が成長の鍵**です。

●症例の多様性より「深さと支援」

例:軽度ADL介入だけでなく、退院支援や家族対応まで含めて経験化

●フィードバックではなく“フィードフォワード”

  • 「ここがダメだった」より、「次にこうしてみよう」の未来志向が◎
  • 振り返りを対話型で行うと、自己効力感が高まりやすい(Bandura理論)

●振り返りを習慣に

  • 日々のリフレクションノート
  • 週1の短時間のケースレビュー会(成功・失敗問わず)

このように、「経験を積ませる=結果を見る」ではなく、「考えさせる」「意味を掘る」仕掛けが必要なのです。


育成する側の心構えと環境づくり

教育とは一方通行ではありません。育成する側の**“関わり方と文化”**こそ、若手の成長を支えます。

●共に考えるスタンス

  • 「自分ならこうする」ではなく、「あなたはどう考えた?」と問い返す
  • 論理的誤りがあっても否定しない、“気づかせる”関わり

●心理的安全性のある職場

Amy Edmondsonの研究によれば、心理的安全性が高いチームほど、失敗を学びに変えやすいと言われています。

  • ミスを責めない
  • 「わからない」と言える雰囲気
  • 観察・報告・相談を歓迎する文化

●育てるのはチーム

新人教育を特定の一人に任せるのではなく、“全員で育てる”ことを意識した関わりが重要です。
OJT以外にも、ケース共有・クロストレーニング・職種横断型の教育カンファレンスが有効です。

まとめ

若手リハビリスタッフを育てる鍵は、「たくさんやらせること」ではなく、“考える経験”を重ねさせることにあります。
信頼できるフィードバック、失敗しても許される環境、共に成長しようとする姿勢――
それらがあってこそ、経験は力に変わります。
“育成”という名のリハビリを、今、私たちも一緒に受けているのです。

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