
みなさん、こんにちは!もんきちです。
今回は、施設間比較(ベンチマーク)について考えましょう。

自分のところだけ見てればいいんじゃないの?

ベンチマークの目的、方法、活用の仕組みづくりに入れて考えてみましょう。
こんな方にオススメ!
- マネジメント初心者の方!
- 医療管理職の方
はじめに
回復期リハビリテーションの評価が「提供量」から「成果(アウトカム)」へ移行している今、病院経営やリハビリ部門運営において重要になるのが施設間比較(ベンチマーク)である。自院だけの評価では強みや改善点は見えず、データを標準化し他施設と比較することで、初めて医療の質が可視化される。本記事では、ベンチマークの目的、方法、活用の仕組みづくりまでを分かりやすく解説する。
なぜベンチマークが必要なのか?―「自院評価」の限界
医療現場では、「以前より改善している」「去年より在宅復帰率が伸びている」といった**“自院内比較”で成果を判断してしまう傾向**がある。しかしこれは、医療の質評価としては不十分である。
医療の質評価研究(Avedis Donabedian, 1988)でも示されているように、医療の成果は**外部基準との比較(External Benchmarking)**が不可欠であり、単独の数値では意味を持たない。
回復期リハビリでは特に、次の理由からベンチマークの導入が有効だと報告されている。
- 地域差・重症度差・患者属性によるばらつきが存在する
- 診療報酬制度がアウトカム(成果)を求める方向性へ変化している
- データ提出加算や質評価制度が導入され、比較可能な標準指標が整備されている
つまり、自院の数値が高いのか低いのか、改善が必要なのか十分なのかは、他施設と比較することで初めて評価できる。
これが、「ベンチマークが必要な理由」である。
施設間比較の方法と見るべき指標 ― FIM・効率・退院先・重症者割合
ベンチマークを行う際に注目すべき指標は、主に次の4つである。
🏷① FIM利得・効率
→機能回復の質とスピードの評価
ポイント:疾患別・年齢別・重症度別に層別化することが必須
🏷② 在宅復帰率・退院先別割合
→「治せたか」ではなく「生活に戻せたか」を見る評価指標。
研究では訪問指導・外泊訓練・退院支援介入が関連因子として示されている。
🏷③ 重症患者受入比率
→「成果だけ高く、受け入れは軽症」という病院の評価偏りを防ぐ指標。
🏷④ リハ提供量・介入開始日
→成果を生む要因分析に必要なプロセス評価(厚労科研班調査より)。
これらを自院データと地域・全国中央値・同規模病院と比較することで、組織の強みと改善課題が可視化される。
改善サイクルの設計 ― 数値を“現場が動く仕組み”に変える方法
ベンチマークは「比較して終わり」では意味がない。
ここからPDCA(最近ではPDSA)が機能する仕組みを構築する必要がある。
改善が進む病院には共通点がある。それは:
✔改善テーマを数値ベースで設定している
例)
❌「早期介入を強化する」
⭕「入院後72時間以内のリハ開始率を80%→95%へ改善」
✔成果をフィードバックし可視化している
- 月次データ共有
- グラフ・ランキング形式
- チーム目標との比較
研究(Hysong, 2009)では、視覚フィードバック導入により現場行動が16〜22%改善することが報告されている。
✔1人の努力ではなく、仕組みで再現できる形にしている
- カンファレンス標準化
- パス化
- ICTによる自動分析
- 退院支援のタイムライン化
成果が「属人的成功」ではなく、「組織の標準」に変わったとき、病院の強さは一段階上がる。
まとめ
医療の成果を伸ばす鍵は、「感覚で改善するのではなく、数値で改善する文化を作ること」である。
ベンチマークは、比較して優劣をつけるためのものではなく、改善のヒントを得る手段だ。
そして改善が継続できる病院には、例外なく仕組み化された改善サイクルが存在する。
今後の診療報酬・質評価制度を見据えるなら、データを単なる報告義務ではなく、病院の強みを育てる経営リソースとして活かすことが求められる。

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