リハビリ 管理職 学生目線でみる「良い指導者」― 管理職が現場に広げる育成文化とは？

はじめに

リハビリ現場の臨床実習では、学生が「良い指導者」に出会えるかどうかが学習体験を大きく左右します。しかし、その環境を整えるのは指導者だけでなく、管理職の役割も欠かせません。本記事では学生目線で見た「良い指導者」の特徴を明らかにしながら、管理職が現場に育成文化を広げるためのヒントを紹介します。

学生が考える「良い指導者」の特徴とは？

臨床実習を経験した学生にとって、「良い指導者」とは単なる知識の伝達者ではありません。学生は以下のような特性を持つ指導者を「学びやすい」と感じます。

• 学生の話をよく聴き、不安や疑問を受け止める
• 小さな成長を見つけて肯定的にフィードバックする
• 指導に一貫性があり、安心して挑戦できる雰囲気をつくる

教育心理学の研究（Deci & Ryan, 2000の自己決定理論）によると、学習者は「有能感」「自律性」「関係性」が満たされると学習意欲が高まるとされています。つまり、学生が「良い指導者」と感じる背景には心理的安全性が関与しており、その構築が学びの質を左右するのです。

---

教育者を支える管理職の役割 ― 育成文化を広げる仕組み

どんなに優れた教育者でも、個人だけで学生を支え続けるのは難しいものです。そこで重要となるのが管理職のマネジメントです。

管理職が実践できる支援は次の通りです：

• 指導時間の確保：臨床業務と教育業務のバランスを調整
• 評価基準の統一：学生指導のばらつきを減らす取り組み
• 教育者の育成研修：指導力を高め、燃え尽きを防ぐ

学術的には、組織学習理論（Senge, 1990）の「学習する組織」が参考になります。これは、組織全体が教育を共有の価値として扱うことで、個人の学習効果が高まるという考え方です。つまり、管理職が育成文化を推進することで、現場に「良い指導」が広がりやすくなるのです。

---

現場で実践できる管理職の取り組み事例

理想を語るだけでなく、現場で実践できる工夫も欠かせません。以下はすぐに導入可能な管理職の取り組み例です。

• 学生アンケートの活用：学生の声を定期的に収集し、指導改善につなげる
• 指導者同士の情報共有会：成功事例や失敗事例を共有し、チーム全体の育成力を底上げ
• 育成文化の醸成：教育を「業務の一部」ではなく「組織の使命」として共有する

厚生労働省の「臨床実習指導者の質向上に関する報告」（2021）でも、学生指導の質を高めるには、管理職による体制整備と組織的支援が欠かせないと示されています。
つまり、育成文化は「個人の善意」ではなく「組織の戦略」として根付かせる必要があるのです。

まとめ

• 学生が求める「良い指導者」は、安心感・傾聴・具体的フィードバックを提供する人
• 管理職は教育者を支える仕組みを整え、育成文化を広げる役割を担う
• 組織全体で「教育」を共有の価値とすることで、学生・教育者・職場の三者が成長する

臨床実習は未来の人材育成の場であり、管理職の関わりが「良い指導者」を増やし、組織の発展を後押しします。